2010年12月12日日曜日

Hertha Bengtson


 
Hertha Bengtson。スウェーデン陶芸の母と思しき彼女の功績と作品の数々の軌跡。彼女の作品集[Design]※1の記述から、器を中心に日用~使い手の景色に深く思いをこめていく、真摯な姿勢が伺えます。
極めて生産的でプレーンな器が台頭していく1900年半ば。合理性を礼賛し、かつての装飾美を振舞うことをさげすむ時勢に、あえて彼女は提案しました。
 
― 装飾は、ものの表層に命と高揚を与え、そのものの姿を決して失うことなく力強く現します ―
 
自然にインスピレーションの源泉を求め、"Fred(スウェーデン語で平和)"を愛する素朴で豊かな感性。生産性に貢献するための仕事としての頑なさとミニマリズム ― 狭間の苦悩で捻出された数々の発想から名作 [Bla Eld ※写真] は生まれました。
1941年に名窯Rorstrandに就いてから9年。戦後の混沌もままならない中における非常にエポックメイキングな陶磁器デザインを成立させたことによって、彼女の名を世に知らしめただけでなく、やがてスウェーデンはおろか世界中へノルディックデザインを牽引するほどの評価と成功を収めていくことになります。※2
 
― 新鮮さや調和を想い、個々時々の必要へ取り入れるという、使い手の喜びや楽しさが在り続けるようにすることが、私の仕事における目標です ―
 
陶芸への飽くなき探究心と遊び心。使い手への思いやり。そして自身を取り巻く仲間や環境への感謝の気持ち。半世紀を経てなお北欧のアイコンとも呼べる普遍性の創出とその成功も、彼女の人柄によって育まれたものだったのでしょう。
 
 
※1 参照資料 [Design : Hertha Bengtson] (出版社不詳)
※2 参照リンク www.designarkivet.se 80年代以降の主な賞歴その他詳細